それから半年が経ち、9月に予約がなかなか取れないレストランで食事をした。会う回数は二年前からしたらいまは月一回あるかないか。二年前はそんなことはなかったが、会うときの顔に多少の曇りを感じていたのは今振り返ると、それはそうだろうと腑に落ちる…

時間が経った。時間はどうも皆に平等に与えられている、保証されているとも思うのだけど、やや古臭さを感じるのは、感覚的な生物学的時間の要素は薫りくらいにしておいて、なにか大局的な視点で川を眺めるような時間を感じる視点があったんだと思う。 カプチ…

あとがき。 数学としてとらえれば横の時間軸をもってきて、今を規定すればそれより前は未来、後ろは過去。そういうイメージに固執していたが、過去は今だから存在していることを時間軸は殺める。過去をどう理解してとらえて、表現していくか。たとえば通時的…

数時間の出来事をあとから考えれば腑に落ちたというか、球体がそれに相応した入れ物にはまった時の心地よさを感じたことではあるのだが、やはり既婚者であるこちらを気にしての行動だったとのちのち連絡が来た彼女はやはり会いたいとのことで、精神的な追い…

個室を生まれた時代に個性がうまれた、そしてプライベートが切り離されたということと仮定してみると、建築はどんどん個室を好むような方向に押している。それは感染症が広まるとさらに加速していき、精神的にも物理的にもぶちぶちと分断されていく。部屋は…

研修医のころから勤務している医院はむかしもいまもなぜだか直通する電車を使いたがらない。どうしてなのだろうか。私の意志なのに私が理解できていない。研修医のころは医院が休みの時は借りていたアパートではなく基本的に実家に帰っていた。当時キャッシ…

久しぶりな感覚だった。会うとでれでれと素直に気持ちを伝える反面、ラインではなかなか予定を合わせないその子には、こちらには妻がいることからすると苦しませているのだろうなと暗に理解をしていたのだけれど、消しゴムで言葉を消していくような塩梅で、…

入口のドアは自動ではなく手動で、そのドアのガラスは曇っている。外からのぞくと売店の商品が並んでいる棚はあるかないか。あっても商品は棚にはもうない。入ってみると、がらんとした空間が広がっているが実は地下には三つの事務所がある。立ち入り検査の…

身軽さをなるべく感じておきたかったが、それまでの平日のストレスがせっかくの祝日の朝を支配していた。春を感じさせる気温と湿度、そして灰色の濃淡のない朝は影をつくらない。久しぶりに降り立った新宿駅で、感染症の影響で臨時便がないことから、定期列…

地震により新幹線が東京から那須塩原までの区間運転となっている。金曜日に神奈川の職場をでてバスを待っている空には時間を感じさせない夕方の空が広がっている。軽く30分は乱れるバス路線は時刻表では10分後でも実際は20分ほど遅れてきた。乗ったバスはち…

新宿駅のバスターミナルがまだ整備されておらず、ヨドバシカメラの向かいのただでさえ人々が道を行きかう中足繁くバスが発着するバスターミナルは、昔から中央高速を経て山に向かう高速バスが多くある。そのためか乗客もそれなりに旅行に向かうというよりか…

午前だけ仕事で、しかも終わるのが伸びてしまってすぐに電話して会った彼女がけろっとしていて、私だったらイライラしてしまうかもとなんでまあ心が狭くなったものかと駅前の丸いロータリーを歩きながら冬晴れ。あまりあてもないが成田のほうにある温泉にで…

まだ学生時代に恋仲であった女性がおそらく殺されたと告げられ、調査協力のために一度押収された携帯電話が手元に戻ってきたころ、ちょうど休みが平日にとっていた週があったことに気づいた。いつも海に行くときは小学生からの仲の友人に車を出してもらうこ…

泊る予定だった相手の看護師の女性から、祖母が下血したとのこと。おそらくがんではないか。とのことだった。人生は一度しかないから。とすこし低い声で話している彼女は自分の人生をどこかで必ず前向きに、というよりかは重たいものを軽々もっているときの…

神領区の165が運用に入るのを好んでいた。JR東海の165系や付属編成だけだったが113系は背もたれに白い布を置いてくれていて、かつ台車も灰色に塗られて清潔感があった。当時東京駅発の大垣夜行は373系で指定席だったが、大垣救済臨時は品川発だったが全社自…

高校時代はまだガラケーで、出会い系サイトで出会って、病んでいたその子は胸元がみえるインナーで写メを送ってきてわたしはたまらずに大学生になって会いに行った。たしかオムライスを食べたのではないか。アーノルドパーマがすきだからと服をかった。いま…

案の定週末に携帯は連絡が来、翌週の月曜日に携帯を押収された。当時の記録や今の記録を取られた。その間もネットニュースではパラレルワールドのようにニュースは更新される。仕事の後、例の車に乗り携帯を受け取った。 そしてそれから四日後、彼女の誕生日…

どういう心持ちで待ち合わせ時間を迎えていいのかわからない。皆に平等に与えられている時間をどう処理して感じていいか、あえて時間を感じたくないと思うのは気圧のある朝の早起きに似ている。意識は線路の向こう側をさし、感染症由来ではない嗅覚の損失を…

翌朝。2時くらいから5時前まで寝ていたのか、その間も夢ではそのニュースや過去の記憶を生きていた。寝ているというより仮に寝ている、感情は寝ていてもより研ぎ澄まされている。ネットストーカー対策でFacebookのアカウントを変えたが以前のメッセージの…

木曜日、突然の警察署からの電話。以前最後千葉であった離婚調停中の彼女が行方不明であると、機動捜査隊から連絡があり、翌週月曜日に捜査に協力するためにお会いすることになった。何が起きたかは察してくれと言われるばかりで、しかし彼女の携帯に私の番…

差別はなくならない。ただ、みな不完全な人間であることをしり、違いがあいまいであることの豊かさを知る。これはできると思う。価値観を変えていく必要がある。

夕方の銀座から東銀座を抜けて築地に歩いていく途中の昼下がりの、首都高の上を渡る橋にある柵に絡まる蔦の印象がある。というよりか柵というまっすぐな線の中に蔦の3次元的な曲線が絡まっていて、ほぼ真上からの太陽だったこともあって蔦の輪郭は強調された…

いつから孤独を飼い始めた。いつからか、思い返してもはっきりわからない。ときにそれは黒くなにか形をかえるものとして片隅にいるときがある。理性を支配するほどに成長しているときもあるし、わずかに味がするほどの度合いのこともある。たとえばさみしく…

なにか、何年も苦労して歳重ねてから花開くまでは苦行の日々だという、今現在の幸せよりか先にそれを求めていた時代から、どうやら、今どのように充足した満足感を得られるかに意識が移行しているように思う。もちろんそれは便利なシステムができそれに依存…

進路予測が難しい台風がきていた。わずかながらの暖かみですらない、冬の色味の濃い雨が、台風によるものだといわれてもどうしてもイメージが合わない。神奈川から富山へ行く途中の長野のホテルで前泊することにした。最終ではまだ富山まで行けるのだが、ど…

木でできた木馬はもはや掘ったひとの魂を感じる。あるいは、50年を超えて手入れされている機械は、もはや魂がこもっている。このことは、今は当たり前のように3Dプリンターで作れるようなものとの違いが、まだ若い人でも感じ取れるのではなかろうか。味が出…

振り返って気づくこととしては、非常事態宣言を出すときに国民が政府に出させたような感があった。あのころを考えてみると、健康な自分がいつ感染するかわからない恐怖や不安で、自分以外の他人をどう制御するか、社会が止まることよりもそちらが強かったよ…

高校時代の教育実習の先生からの、「ひとりのうちにまた」ということばが引っかかっており、すでに両親ともを知っている私は、その日山形駅に向かうタクシーをバスターミナルに終点を変えてもらって、仙台行きのバスに乗った。小一時間の高速バスは毎週のよ…

夏も終わりに近い暖かい日は、さて秋の始まりだと思わせる空の雲の速さと透明感、また風の温度に皮膚が固まるときの、対比的に必ずといってもいいほど思い出す側近の記憶だ。

リフレーミングということばがある。認識をし直すといった意味合いだ。なんとなくだが特に前向きな人というのはこのリフレーミングした際に考え方を刷新しているのではないかと思う。あれだけ感情を持っていかれていた横浜の最上階に住む彼女は同時に経営能…