こぎれいな最近のビジネスホテルで、子供を連れて家を出ていかれてしまった訳あり女性が、こちらは上司と日本酒をあおってから部屋で落ち合った。なにか陰の漂う女性で、たとえば、主張したいことがあっても目線がすこしずれ、会話でも語尾に意識的かわからないが、聞き手が引っかかるようなアクセントを持ってくる。だから、聞き手は受け取る内容とともにすこしねじれた角を触っていることになる。しっとりとした肌ざわりとふっくらとした曲線があるのだが、首元からは母の匂いもある。歯列矯正のワイヤーが愕然とした冷たい物質感を放ち、唇からは溶けて漏れそうな感情と、微熱があった。硬すぎる板は脆い。どこかにエラーがありそうなアプリケーションということではなく、物質的な脆さ。塑性変形するひずみを与えかねないと察知したため、雨の降る朝は、さっと身支度をしたように思う。初対面であろうが相手に対してちょっと深い切込みを入れてしまうことができる。私もそうだしこの女性もそうだった。深く切り込めるために相手をいきなりつかんでしまうわけだが、一方暴力的な面もあるのも事実だし、とらえた意識がまだ熱を持った生成されたばかりの場合、冷やして見えてくるその全体像を冷静に判断しないと、悪気はないのという言い訳をしたくなるようなそういう判断ミスを犯す。