高速鉄道にのればそんな遅くにはならないのだが、横浜にはすこし早くついてしまうと思ったために考えて、それなら南へ直通する鉄道に茨城県にいるうちからのってしまおうと思ったのは時間的には失敗だったが、この工程変更のために気動車に乗ることができて香りをかぐことができた。いまだ朝は旧式の気動車をどうにか改造した形式も走っていると知っていたが、夜にはさすがに車庫で寝ているか、と新式の車両だった。2両編成か1両編成の運行スタイルにもかかわらず複線区間もあり、立ち客がでるほどの込み具合。空気輸送などと国鉄時代に赤字路線を整理していた時代揶揄された言葉があったと思うが、対照的に生きた鉄道路線だと安心した。乗り換えた常磐線から東海道への、東京と上野の間の仕切りを解いた鉄道を使うことは非常にストレスがなく気に入っている。当初は始発駅が通過駅になると危惧していたが、1970年代の鉄道雑誌にニューヨークの地下鉄のように循環路線に中・長距離列車が乗り入れてくるべきだ。といった文章を思い出した。大阪環状線はそうか、乗り入れてくる路線もあるのか。と対比して東京のとてもしっかりとした山の手線の厚みを感じた。疲れもあったのだが関内の彼女の部屋であけたワインは二杯ほどで酔い、時間も遅かったため就寝の手はずを踏む。シャワーを浴びて整った彼女はまた柔らかな皺をみせ、身体に柔らかくコンパクトにまとわりついた。7時台のそのあたりは通勤で街に来る人たちが、日差しがまだ上がりきっていない夜明けの味をそこここに残した街中を、住んでいる土地の味を歩きながら混ぜていく。こちらはそれとは逆方向に駅に向かっているものだからすれ違うたびに種々の味覚変化をマスク越しに楽しむ。