新宿駅のバスターミナルがまだ整備されておらず、ヨドバシカメラの向かいのただでさえ人々が道を行きかう中足繁くバスが発着するバスターミナルは、昔から中央高速を経て山に向かう高速バスが多くある。そのためか乗客もそれなりに旅行に向かうというよりか登山客が多く、かつ数回は利用している人たちであろう。手慣れて行列に並ぶ。一方普段着の乗客は大体が若く、実家に帰るのではなかろうかと思われる井出達だった。私はそのどちらにも属さず、つれていた女性と甲府の先の一宮まで乗り、いわゆる盆地の壁の内壁の斜面の途中を走る街道で降ろされてからとぼとぼと緩やかな傾斜を上った。個人でやっているワイナリーで試飲させていただき、秋なので桃はすでに枝だけであるけれど、内壁から底を見下ろしながら畑の中にある小道を酔い覚ましがてら彼女と下る。冬ではないけれど日差しが冬の夕方のような強さと、日差しに周囲にはまだ暖かさを感じる柔らかな空気が印象に残っている。大体このまま駅に着くころには日が暮れていて、帰りは熟睡していることが常であった。