それから半年が経ち、9月に予約がなかなか取れないレストランで食事をした。会う回数は二年前からしたらいまは月一回あるかないか。二年前はそんなことはなかったが、会うときの顔に多少の曇りを感じていたのは今振り返ると、それはそうだろうと腑に落ちる。水垢はそのうちカビにでもなってしまい、根強くこすっても取れないタイルのような、濃いカビの色は夕方から夜への光がなくなっていく街で見なかったことにしておくと無意識にしていた。なんどかその消えていく感覚をなぞって実感になっていった。たとえば透明な液体に赤いシロップを垂らしていくと、滴数が多くなるほど赤が赤くなり、赤だったのだと認めていくその過程に似て、コーヒーにミルクを垂らして広がっていく感覚ではない。その差にはどうも私の不安や焦りが伴っていたのではないかと思う。