終電から数本前の東海道新幹線の東京行きは、酒臭い。こんなに数分間隔で走っているのに指定席の並びは取れなかった。缶のハイボールを買って夜の東海道新幹線の通路側の座席に座った。名古屋を出てそのまま新幹線は突っ走るが、少し空中を泳ぐような緩いカーブと、特有のひゅーんという音が、さらに浜名湖あたりは水面を飛ぶようにして走るのがとても気持ちがよい。ただ、いま夜であるため景色はほとんど見えない。となると高速で走るゆえに感じる圧力と、カーブおよび上下動する感覚だけになる。通路側であるため景色は見えず、ただただ、車内の特有の、シートのような匂いとお酒、またおつまみと、多く出張帰りの男性の匂いが混じる。そうして目をつぶるのだが、身を任せる心地よさに馴染んでいく。

朝にはないこころの柔軟性が夜にはあるのではないか。と思う。朝の新幹線で仮眠をとっていると、高速ではしるゆえの振動でふと目が覚めたとき、風景の速さに恐怖を感じたことがある。朝は心がまだ固いのか。