大学生の時に後輩の女の子をつれて北千住のワインと煮込みというキャッチフレーズで、おしゃれな居酒屋に入った。後輩となるとまして20前半で、膝上のスカートは酔ってきた赤ワインの回りも早く、そのまま泊まった。それから温泉がメインの湯河原の温泉宿にいって近くのイタリアンで食事をして、ちょうど海岸で花火があったから見に行った記憶は青春のような酸っぱさがあったし、千葉の山奥の温泉に行った時もほどよく酔ってたのしい思いでしかない。かれこれ10年弱経って性欲のためだけに会うことがあったが、強いて場所を洲崎の中にあるビジネスホテルにした。ここは以前洲崎という赤線街のなかで東陽ホテルといういろいろな空気感を背負ってやっていた建物で、いまは大手のアパホテルが回収しているが、改修して運用しているために当時の空気感は残っている。

いつからか赤線街というものに興味が出た。特にカフェー建築という、戦後、RAAが立ち上がったころに赤線街に乱立した張りぼてのような見た目だがお茶屋さんということで運用していた建物で、扉が斜めだったり、手すりが斜めだったり、豆タイルを多用している、また窓も特徴的で、外壁の塗装も胸をつくものがある。とても妖艶な建物やシックな建物や、とてつもない空気感で見るものを圧倒させる。今のシステマチックな建築物とは全く違う。

改修されたそのホテルは、壁面の隅や床、あるいはエレベーターに当時の趣を残していた。また扉を開けるとすぐベッドがあるという昔のラブホテルのような作りも気に入った。初夏だったと思う。