午前だけ仕事で、しかも終わるのが伸びてしまってすぐに電話して会った彼女がけろっとしていて、私だったらイライラしてしまうかもとなんでまあ心が狭くなったものかと駅前の丸いロータリーを歩きながら冬晴れ。あまりあてもないが成田のほうにある温泉にでもいくかと思い立ち、東京とは逆方面にのった。この路線は途中から運転本数が40分に一本と極端に少なくなることも知らずに乗換駅に着いた時には、昼過ぎで食事をすることにした。ニュータウンてこういうことか、と整然と淡々としたリズムで家が立ち並んでいるのをみるのだが、どうも人影は少なく、歩道のコンクリートはところどころ隆起して荒れている。徒歩5分くらいの和食屋があったためそこで昼食をとり、温泉の最寄り駅に着いた。最寄り駅は、殺されたとされる女性の車が発見された公園が近くにあることは知っていて、半ば私はそこに行きたかったというのもあったのだった。連れてきている彼女には写真が撮りたいからと告げ、散歩がてらその公園に向かう。ニュータウンということばにさらに相応しいのではないかと思われる地区を左に眺めながら、一方でゴーストタウンのようなひとけのなさでもあった。右側にはおそらく旧来からある工場があり、ちょうど黒いジャンパーをきた50代くらいの女性がでてきた。いささかニュータウンとも似つかない質素な格好だったが、工場の看板の時間を経た色合いとはとても合っており、腑に落ちる。それを超えると鈍角に道は曲がり高低差のある公園につく。また上がるのか。と思ったが彼女の話声も聞かずに、落ち葉を清掃していた男性3人の恰好を注視していた。捜索をしているのではないかと思ったからである。どうやらそうではなく単に落ち葉を掃除しているだけのようだったが、轟音とともに吹き飛ばされる落ち葉をみているとどうも落ち着かない。テレビでもみた駐車場が見えてきたが、これ以上は近づきたくない。と輪郭のはっきりした意識が見えてきた。左手には古墳群があり、古墳の上からは沼が見渡せている。そして大型のトラックが入れる産業廃棄物処理場も眼下に見え、左手にさらに体を回すとニュータウンの街並み。ひとけのなさと街にどことなく褪せた色を多く感じ、彩はなかった。夜になるとさぞ寒く暗いのではないか。そのままタクシーに乗り込み私たちは温泉に向かった。